イグジットとは?意味とIPO・M&Aの違いを解説
この記事の要点
- イグジットとは株式売却などで投資資金を回収する出口戦略の総称
- 代表的な方法はIPO・M&A・事業承継の3つで向き不向きが異なる
- 海外上場も選択肢の一つだが条件や期間は取引所と当局の審査次第
イグジットとは何か、結論から
イグジットとは、創業者や投資家が保有する株式を売却するなどして、投資資金を回収する「出口戦略」のことです。代表的な方法は株式上場(IPO)と、会社や事業を他社に売却するM&Aの2つで、どちらを選ぶかによってその後の経営のあり方が大きく変わります。
英語の「exit(出口)」がそのまま使われている言葉で、ベンチャーキャピタルなどの投資家が出資した会社から資金を引き揚げる場面でよく使われますが、創業経営者が引退や事業承継を考える場面でも同じ言葉が使われます。
イグジットという言葉が使われる2つの場面
「イグジットとは何か」を調べる人の多くは、次のどちらかの立場にいます。
- 投資家側:出資した会社の株式をいつ・どう売却して利益を確定するか
- 経営者側:自分が育てた会社を次のフェーズへどう引き継ぐか(上場・売却・承継)
同じ「イグジット」でも、投資家にとっては資金回収のタイミングの話であり、経営者にとっては会社の将来の形を決める経営判断です。この記事では主に経営者側の視点で、代表的な選択肢を比較します。
リバティーコンサルティング株式会社が、モーリシャス証券取引所の新興市場(DEM)への上場を、日本側のプロジェクト責任者として支援しています。
上場という選択肢を相談する →イグジットの代表的な方法
IPO(株式上場)
証券取引所に株式を公開し、不特定多数の投資家から資金を調達できるようにする方法です。知名度や社会的信用が高まる一方、上場準備には監査体制や内部統制の整備など多くの手間がかかり、上場後は四半期ごとの開示義務など継続的な負担が発生します。
日本国内の上場先としては東京証券取引所のほか、特定投資家(プロの投資家)向けの市場として東京プロマーケットがあります。東京プロマーケットは2009年にTOKYO AIMとして開設され、2012年7月に現在の名称になりました。上場基準の詳細な数値は時期によって変わるため、必ず日本取引所グループの公式情報で確認してください。
海外の取引所を選ぶ会社もあります。例えばモーリシャス証券取引所(SEM)には、実績が十分でない成長企業向けの新興市場(DEM)と、より規模の大きい企業向けの公式市場という2つの市場があります。DEMの上場条件は決算書1年分(国際会計基準・IFRSで作成し、国際監査基準で限定のつかない監査を受けたもの)、上場時の時価総額2,000万ルピー以上(1ルピー=約3.33円で計算するとおおよそ6,700万円。為替レートで変動します)、株主100人以上、かつ一般株主の持ち分10%以上という条件です(2つは別々の条件で、「100人の一般株主が10%を持つ」という意味ではありません)。実績がない会社でも、独立した財務アドバイザーが認めた3年分の事業計画があれば申請できる制度もあります。詳細はSEMの公式ページ(DEM上場条件)で確認できます。
公式市場はより厳格で、決算書3年分、時価総額2,000万ルピー以上、株主200人以上かつ一般株主の持ち分25%以上(段階的に15%→20%→25%へ引き上げる方式もある)が条件です。こちらは公式市場の上場条件のページに記載があります。上場会社数は2025年末時点で公式市場57社・DEM33社とされ、取引所のファクトブックによる集計です。上場の可否や時期は取引所と当局の審査次第であり、結果や期間を約束するものではありません。
M&A(会社・事業の売却)
他社に株式や事業を譲渡し、経営権や事業そのものを引き継いでもらう方法です。上場に比べて準備期間が短く済むケースもありますが、譲渡価格の算定や契約条件の交渉には専門的な知識が欠かせません。株価算定の考え方や税務上の扱いは案件ごとに異なるため、税理士や弁護士、M&A仲介会社など専門家への確認が必須です。
M&Aによるイグジットでは、「早く現金化できた」というケースもあれば、「交渉が長引き、想定より条件が下がった」というケースもあります。買い手企業との経営方針の違いから、譲渡後に従業員の離職が相次いだという失敗例も一般的に指摘されます。価格や条件の交渉だけでなく、譲渡後に会社や事業がどう運営されるかまで含めて検討することが重要です。
事業承継(親族内・社内への引継ぎ)
親族や役員・従業員に経営を引き継ぐ方法も、広い意味でのイグジットの一形態といえます。株式の買取資金や相続税・贈与税の問題が絡むため、こちらも税理士など専門家との相談が欠かせません。税制上の扱いは制度改正で変わることがあるため、最新情報は国税庁の公式サイトで確認することをおすすめします。
イグジットの方法を選ぶときの考え方
どの方法にも向き不向きがあります。
- 急成長を目指し、大規模な資金調達が必要な会社:IPOが選択肢になりやすい
- 後継者が社内にいない、早期に経営から引退したい会社:M&Aが検討されやすい
- 家業として長く引き継ぎたい会社:親族内・社内承継が検討されやすい
ただし、どの方法が「正解」というものではありません。上場すれば必ず大きな資金が得られるわけではなく、M&Aも必ず希望条件で成立するとは限りません。会社の規模、業種、経営者の年齢や意向、株主構成などを踏まえて、複数の選択肢を比較検討することが大切です。
上場までの一般的な流れ(一例)
海外取引所を含め、株式上場には一般的に次のような流れがあります。あくまで一例であり、会社ごとに期間や内容は大きく異なります。
- 現状分析と計画立案(事業・財務の調査、上場形態の設計、専門家選び)
- 監査と決算書の整備(国際会計基準への対応含む)
- 申請書類の準備(上場書類・事業計画・法務体制の整備)
- 取引所・当局への申請と審査対応
- 投資家向け説明資料と募集の準備
- 上場・売買開始とその後の継続開示
これまで監査を受けていない会社の場合、2番目の決算書整備が最も時間のかかる工程になりやすい点には注意が必要です。海外取引所の場合、日本側の取りまとめ役(戦略・工程管理・資料作成)と、現地の専門家(現地アドバイザー、弁護士、監査人、証券会社など)の役割分担があり、取引所・当局への正式な申請は資格を持つ現地の専門家が行います。株式の募集や勧誘そのものは、免許・登録を持つ証券会社などの業務であり、取りまとめ役が行う仕事ではありません。
まとめ
イグジットとは、投資資金の回収や経営の引継ぎを目的とした「出口戦略」の総称であり、IPO・M&A・事業承継といった複数の選択肢があります。あなたの会社にとってどの方法が適しているかは、事業の成長段階や株主構成、経営者自身の考え方によって変わります。いずれの方法を選ぶ場合も、価格・税務・契約条件に関する最終判断は、税理士・弁護士・証券会社・取引所などの専門家や公式情報で確かめることが欠かせません。
よくある質問
- Q. イグジットとエグジットは同じ意味ですか?
- A. 表記の違いだけで、同じ英語「exit」に由来する同じ意味の言葉です。資金調達やM&Aの文脈ではどちらの表記も使われています。
- Q. イグジットは投資家だけの言葉ですか?
- A. もともとは投資家が出資回収する場面で使われていましたが、現在は創業経営者が会社の将来を考える際にも広く使われる言葉になっています。
- Q. イグジットの方法はIPOとM&A以外にもありますか?
- A. 親族内や社内の役員・従業員への事業承継も、広い意味でのイグジットの一形態として扱われることがあります。税務面は専門家への確認が必要です。



